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センター試験《古文》2015本試験『夢の通ひ路物語』解説・品詞分解(2)

      2015/08/24

※2015年(平成27年度)センター試験の本試験『国語』第3問の古文にて出題

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 原文・現代語訳のみはこちらセンター試験《古文》2015本試験『夢の通ひ路物語』現代語訳 

 

「この程見奉り に、御方々思しわづらふもむべに 侍り

 

奉り=補助動詞ラ行四段「奉る」の連用形、謙譲語。動作の対象である男君を敬っている。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

むべに=ナリ活用の形容動詞「宜なり」の連用形、もっともである、道理である、いかにもである

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り」の終止形、丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である女君を敬っている。この敬語を使った右近からの敬意。

※「候ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

※補助動詞=用言などの直後に置いて、その用言に少し意味を添えるように補助する動詞。英語で言う助動詞「canwill」みたいなもの。

※本動詞=単体で意味を成す動詞、補助動詞ではないもの。

英語だと、「need」には助動詞と通常の動詞としての用法があるが、「候ふ・侍(はべ)り」も意味は違うがこれみたいなもの

 

「最近、(男君)を拝見したところ、男君のご両親が思い悩みなさるのももっともであります。

 

 

げに痩せ痩せとなら  給ひ、こよなく御色のさ青に見奉り 候ひ 

 

げに(実に)=副詞、なるほど、実に、まことに。本当に

 

なら=ラ行四段動詞「成る」の未然形

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。すぐ下に尊敬語が来ていないときは必ず「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ひ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である男君を敬っている。敬語を使った右近からの敬意。

 

さ青(を)=名詞、青、「さ」は接頭語であり語意を強める働きをする意味なので気にしなくてもよい。

 

奉り=補助動詞ラ行四段「奉る」の連用形、謙譲語。動作の対象である男君を敬っている。右近からの敬意。

 

候ひ=補助動詞ハ行四段「候ふ(さぶらふ)」の連用形、丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である女君を敬っている。この敬語を使った右近からの敬意。

※「候ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

実にひどく痩せてなさって、この上なくお顔色も真っ青だと拝見しました。

 

 

清さだも、久しううちおこたり 侍り を、

 

おこたり=ラ行四段動詞「怠る」の連用形、怠ける、気が緩む。(病気が)良くなる、快方に向かう。頭に付いている「うち」は接頭語で気にしなくてもよい。

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り」の連用形、丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である女君を敬っている。この敬語を使った右近からの敬意。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

清さだも、(男君とは)長い間音沙汰なくしておりましたので、

 

 

いかに思しとぢめけむと、日頃いぶかしう

 

いかに=副詞、どんなに、どう。「いかに」の中には係助詞「か」が含まれていて係り結びが起こる。結びは連体形となる。

 

けむ=過去推量の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。基本的に「けむ」は文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」、文中に来ると「過去の伝聞・過去の婉曲」

 

いぶかしう=シク活用の形容詞「いぶかし」の連用形が音便化したもの。気がかりだ、心が晴れない。不審だ、疑わしい

 

男君はどのように諦めなさったのだろうかと、ここ数日の間は気がかりで、

 

 

恐ろしう思ひ給へられ に、

 

「給へられ」については、文脈を考慮しないままだと、2つの解釈がある。

①「給 へ/ら れ」

給へ=補助動詞下二段「給ふ」の未然形、謙譲語。動作の対象である男君を敬っている。敬語を使った右近からの敬意

られ=自発の助動詞「らる」の連用形、接続は未然形

②「給 へ/ら/れ」

給へ=補助動詞四段「給ふ」の已然形、尊敬語。動作の主体である右近を敬っている。敬語を使った右近からの敬意

ら=完了・存続の助動詞「り」の未然形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

れ=受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」の連用形、接続は未然形

 

②の解釈だと右近が自尊敬語(自分で自分を敬うこと)を使ったことになり、明らかにおかしい。自尊敬語は天皇クラスの人間でない限り使わない。よって①が正解

 

※「たまふ」は四段活用と下二段活用の二つのタイプがある。四段活用のときは『尊敬語』、下二段活用のときは『謙譲語』となるので注意。下二段活用のときには終止形と命令形にならないため、活用形から判断できる。四段と下二段のそれぞれに本動詞・補助動詞としての意味がある。

 

※「らる」の接続は未然形であるが、四段・ナ変・ラ変動詞以外の未然形に限られる。四段・ナ変・ラ変動詞の未然形のときは「る」が用いられる。「らる」の接続は未然形の中でも語尾の発音が「e(エ)・i(イ)」のものであり、「る」だと語尾の発音が「a(ア)」のものであると考えると良い。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

恐ろしく思わずにはいられませんでしたが、

 

 

なほ忍び はて 給は   

 

忍び=バ行四段動詞「忍ぶ」の連用形、我慢する、こらえる。人目を忍ぶ、目立たない姿になる

 

はて=補助動詞タ行下二段「果つ」の連用形、すっかり~する、~し終わる。

 

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ」の未然形、尊敬語。動作の主体である男君を敬っている。この敬語を使った右近からの敬意。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

や=疑問の係助詞、結びは連体形となるはずだが、ここでは省略されている。「侍らむ/候はむ」が省略されていると考えられる。

※今回のように係助詞の前に「に(断定の助動詞)」がついている時は「あり(ラ変動詞)」などが省略されている。場合によって敬語になったり、助動詞がついたりする。

「にや・にか」だと、「ある・侍る(「あり」の丁寧語)・あらむ・ありけむ」など

「にこそ」だと、「あれ・侍れ・あらめ・ありけめ」など

 

やはり男君は我慢しきれなくていらっしゃるのでしょうか、

 

 

昨日文おこせ 中に、かかるものなむ 侍り ける

 

おこせ=サ行下二動詞「遣す(おこす)」の已然形、こちらへ送ってくる、よこす

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。訳す際には気にしなくてよい。

 

侍り=ラ変動詞「侍り」の連用形、「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である女君を敬っている。この敬語を使った右近からの敬意。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び

 

昨日、(清さだが)手紙を送ってきた(その手紙の)中に、このようなものがございました。

 

 

『まことに、うち悩み給ふこと、日数へて言ふ甲斐なく、見奉る心苦しう

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連体形、尊敬語。動作の主体である男君を敬っている。この敬語を実際に使った手紙の書き主である清さだからの敬意。

 

甲斐なく=ク活用の形容詞「甲斐なし(かひなし)」の連用形、どうしようもない、効果がない、むだだ

 

奉る=補助動詞ラ行四段「奉る」の連体形、謙譲語。動作の対象(見らる人)である男君を敬っている。清さだからの敬意。

 

心苦しう=シク活用の形容詞「心苦し」の連用形が音便化したもの。気の毒だ。気がかりだ、心配だ

 

『まことに、(男君が)お悩みになることは、日数を経て、言いようもなく(ひどいもので)、拝見するのも気の毒で。

※ここの『』の手紙の内容を男君が書いたものと間違ってとらえる人がたまにいるが、それはあり得ない。なぜなら、「給ふ」、「奉る」などの敬語の用法から考え、男君が書いたものだとすると自尊敬語(自分で自分を敬うこと)となるからである。自尊敬語は天皇クラスの人間でない限り使わない。よって、この手紙の書き手は清さだである。

 

 

東宮のいとかなしう まつはさ  給へ 

 

東宮=名詞、皇太子、帝の子

 

かなしう=シク活用の形容詞「愛し/悲し」の連用形が音便化したもの。いとしい、かわいい。悲しい

 

まつはさ=サ行四段動詞「まつはす(纏はす)」の未然形、付きまとう、まといつく。まといつかせる、絶えず傍に付き添わせる

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。すぐ下に尊敬語が来ていないときは必ず「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給へ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である東宮を敬っている。敬語を使った清さだからの敬意。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

※接続助詞「を・に・ば・ど・も・ども・が」があるとその後に続く文章において主語が変わる可能性がある。読点の直前に「をにばばどもが」の文字のどれかがあれば主語が変わるかもしれないと思えばよい。実際この後、東宮から男君に主語がかわっている。

 

皇太子がとても可愛らしくまといつきなさるので、

 

 

とけても籠ら 給は を、

 

とけ=カ行下二段動詞「解く」の連用形、官職から離れる。打ち解ける、安心する。ほどける。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。すぐ下に尊敬語が来ていないときは必ず「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給は」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である男君を敬っている。敬語を使った清さだからの敬意。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

(男君は)お仕事のない時でもお籠りになることもないが、

 

 

この頃こそうちつづきても参り 給は 

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない。」

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語。動作の対象である天皇を敬っている。清さだからの敬意。

 

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ」の未然形、尊敬語。動作の主体である男君を敬っている。清さだからの敬意。

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

この頃は、連続して(宮中に)参ることもお出来にならず、

 

 

ひとへに悩みまさら  給へ』と侍り 」とて、

 

まさら=ラ行四段動詞「増さる・勝る」の未然形、増える、多くなる。優れる、勝る

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。すぐ下に尊敬語が来ていないときは必ず「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給へ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である男君を敬っている。敬語を使った清さだからの敬意。

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている

 

侍り=ラ変動詞「侍り」の連用形、「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である女君を敬っている。この敬語を使った右近からの敬意。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

一層苦しみが増していらっしゃる。』と(清さだの手紙に書かれて)ございました。」と(右近は)言って、

 

 

御消息取う出たれ なかなか 心憂く、そら恐ろしきに、

 

消息(せうそこ)=名詞、連絡・便り・手紙。案内を乞うこと、声をかけること

 

たれ=完了の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく

 

なかなか=副詞、かえって、むしろ

 

心憂く=ク活用の形容詞「心憂し」の連用形、つらい、心苦しい。いやだ、不快だ

 

お手紙を取り出したけれど、(女君は)かえってつらく、なんとなく恐ろしいので、

 

 

いかでかくは言ふに あら」とて、泣き給ひ 

 

いかで=副詞、(疑問・反語で)どうして

 

かく=副詞、このように、こんな、こう

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

か=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語。動作の主体である女君を敬っている。地の文なので作者からの敬意。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

「どうして、このように言うのであろうか。」と言って、お泣きになった。

 

 

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