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センター試験《古文》2015本試験『夢の通ひ路物語』現代語訳

※2015年(平成27年度)センター試験の本試験『国語』第3問の古文にて出題

「黒=原文」・「青=現代語訳

解説・品詞分解はこちらセンター試験《古文》2015本試験『夢の通ひ路物語』解説・品詞分解(1)

 

かたみに恋しう思し添ふことさまざまなれど、夢ならで通ひぬべき身ならねば、

 

(男君と女君は)お互いに恋しく思い募ることがさまざまであるけれど、(男君は)夢でないときに通える身ではないので、

 

 

現の頼め絶えぬる心憂さのみ思しつづけ、

 

現実で頼みに思わせたことが(叶うことなく)絶えてしまったつらさばかりを思い続け、

 

 

大空をのみうち眺めつつ、もの心細く思しわたりけり。

 

大空ばかりを眺めて物思いに沈んでは、心細くお思いになり続けていた。

 

 

男の御心には、まして恨めしう、あぢきなき嘆きに添へて、

 

男君のお心には、いっそう残念で、(女君への)どうにもならない悲しみに加えて、

 

 

御子の御気配もいとつつましう、鏡の影もをさをさ覚ゆれば、

 

皇子のご様子もとても気が引け、鏡(に映った自分)の顔も(皇子に)はっきり似ているだと思われるので、

 

 

いよいよ「あきらめてしがな」と思しわたれど、

 

ますます「(皇子が自分の子なのかどうかを)はっきりさせたい。」と思い続けなさるが、

 

 

ありしやうに語らひ人さへ聞こえねば、

 

昔のように相談相手(だった右近に)までもお話し申し上げないので、

 

 

「人わろく、今さらかかづらひ、をこなるものに思ひまどはれむか」と心置かれて、

 

「みっともなく、今さら関わり、愚かなものだと困惑されるだろうか。」と気にかけずにはいられなく、

 

 

清さだにだにも御心とけてものたまはず、いとどしき御物思ひをぞし給ひける。

 

清さだにさえもお心を打ち解けておっしゃらず、ますますひどい物思いをしなさった。

 

 

こなたにも御心に絶えず思し嘆けど、何かは漏らし給はむ。

 

こちらの(女君の)方でも絶えず思い嘆きなさるけれど、どうして(その悩みを)漏らしなさるだろうか。(いや、なさらない。)

 

 

御宿直などうちしきり、おのづから御前がちにて、

 

女君が帝の寝所に仕えることがたびたびあり、自然と帝のおそばにいることも多く、

 

 

御こころざしのになきさまになり まさるも、よに心憂く、恐ろしう、

 

帝のご愛情がこの上ない様子に増していくのも、実につらく、恐ろしく

 

 

人知れず悩ましう思して、いささか御局に下り給へり。

 

人知れず悩ましく思いなさって、すこし(自分の)お部屋にお戻りになっていた。

 

 

人少なう、しめやかにながめ給へる夕暮れに、右近、御側に参りて、

 

人も少なく、しんみりと物思いに沈みなさっていた夕暮れ時に、右近が、女君のおそばに参って、

 

 

御かしらなど参るついで、かの御事をほのかに聞こえ奉る。

 

御髪を整えて差し上げるついでに、例の(男君についての)御事をほんのすこし申し上げる。

 

 

(2)

 

「この程見奉りしに、御方々思しわづらふもむべに侍り。

 

「最近、(男君)を拝見したところ、男君のご両親が思い悩みなさるのももっともであります。

 

 

げに痩せ痩せとならせ給ひ、こよなく御色のさ青に見奉り候ひぬ。

 

実にひどく痩せてなさって、この上なくお顔色も真っ青だと拝見しました。

 

 

清さだも、久しううちおこたり侍りしを、

 

清さだも、(男君とは)長い間音沙汰なくしておりましたので、

 

 

いかに思しとぢめけむと、日頃いぶかしう、

 

男君はどのように諦めなさったのだろうかと、ここ数日の間は気がかりで、

 

 

恐ろしう思ひ給へられしに、

 

恐ろしく思わずにはいられませんでしたが、

 

 

なほ忍びはて給はぬにや、

 

やはり男君は我慢しきれなくていらっしゃるのでしょうか、

 

 

昨日文おこせし中に、かかるものなむ侍りける。

 

昨日、(清さだが)手紙を送ってきた(その手紙の)中に、このようなものがございました。

 

 

『まことに、うち悩み給ふこと、日数へて言ふ甲斐なく、見奉るも心苦しう。

 

 

『まことに、(男君が)お悩みになることは、日数を経て、言いようもなく(ひどいもので)、拝見するのも気の毒で。

※ここの『』の手紙の内容を男君が書いたものと間違ってとらえる人がたまにいるが、それはあり得ない。なぜなら、「給ふ」、「奉る」などの敬語の用法から考え、男君が書いたものだとすると自尊敬語(自分で自分を敬うこと)となるからである。自尊敬語は天皇クラスの人間でない限り使わない。よって、この手紙の書き手は清さだである。

 

 

東宮のいとかなしうまつはさせ給へば、

 

皇太子がとても可愛らしくまといつきなさるので、

 

 

とけても籠らせ給はぬを、

 

(男君は)お仕事のない時でもお籠りになることもないが、

 

 

この頃こそ、えうちつづきても参り給はで、

 

この頃は、連続して(宮中に)参ることもお出来にならず、

 

 

ひとへに悩みまさらせ給へ』と侍りし」とて、

 

一層苦しみが増していらっしゃる。』と(清さだの手紙に書かれて)ございました。」と(右近は)言って、

 

 

御消息取う出たれど、なかなか心憂く、そら恐ろしきに、

 

お手紙を取り出したけれど、(女君は)かえってつらく、なんとなく恐ろしいので、

 

 

「いかで、かくは言ふにかあらむ」とて、泣き給ひぬ。

 

「どうして、このように言うのであろうか。」と言って、お泣きになった。

 

 

(3)

 

「こたびは、とぢめにも侍らむ。

 

「今回が最後なのでございましょう。

 

 

御覧ぜざらむは、罪深きことにこそ思ほさめ」とて、うち泣きて、

 

(このお手紙をあなたが)御覧にならないなら、罪深いことであると思いなさるでしょう。」と(右近は)言って、泣いて、

 

 

「昔ながらの御ありさまならましかば、

 

「(もし今でもお二人の関係が、)昔のままのご様子であったとしたら、

 

 

かくひき違ひ、いづこにも苦しき御心の添ふべきや」と、

 

このように予期しないこととなり、どちらにも苦しいお気持ちが加わるでしょうか。いや、そのようになることはなかったでしょう。」

 

 

と、忍びても聞こゆれば、

 

と、(右近は)ひそかに申し上げるので、

 

 

いとど恥づかしう、げに悲しくて、

 

(女君は)ますます恥ずかしく、本当に悲しくて、

 

 

振り捨てやらで御覧ず。

 

振り捨てきれないで(男君のお手紙を)御覧になる。

 

 

「さりともと  頼めし甲斐(かひ)も  なきあとに  世のつねならぬ   ながめだにせよ

 

(今は離れ離れで悲しい境遇だが、)そうとはいっても(いつかは昔のように会えるようになるだろうと)と頼みに思わせた甲斐も無い。せめて私の亡き後に、世間一般でするよりも深い物思いだけでもしてくれ

 

 

雲居のよそに見奉り、さるものの音調べし夕べより、心地も乱れ、

 

(入内して私から遠く離れたあなたを)宮中で拝見し、(帝と女君の前で)あの笛を演奏した夕べから、心地も乱れ

 

 

悩ましう思ひ給へしに、

 

悩ましく思っておりましたところ、

 

 

ほどなく魂の憂き身を捨てて、君があたり迷ひ出でなば、

 

まもなく私の魂がつらい身を捨てて、あなたの辺りにさまよい出たなら、

 

 

結びとめ給へかし。

 

(あなたのもとに)結びとめてくださいよ。

 

 

惜しけくあらぬ命も、まだ絶えはてねば」

 

惜しくもないこの私の命も、まだ絶え果てはいないので。」

 

 

など、あはれに、つねよりはいとど見所ありて書きすさみ給ふを御覧ずるに、

 

などと、しみじみと感じて、いつもよりさらに見所があるように気の向くままに(男君が)書いていらっしゃるのを(女君が)御覧になると、

 

 

来し方行く先みなかきくれて、御袖いたう濡らし給ふ。

 

これまでのことやこれから先のことがみな(絶望で)暗くかすんで、袖を(涙で)ひどく濡らしなさる。

 

 

うち臥し給へるを、見奉るもいとほしう、

 

(女君が)伏しておられるのを、(右近は)拝見するのも気の毒で、

 

 

「いかなりし世の御契りにや」と、思ひ嘆くめり。

 

「どのようであった前世のご縁なのだろうか。」と、思い嘆くようである。

 

 

「人目なき程に、あはれ、御返しを」と聞こゆれば、御心も慌しくて、

 

「人目が無いうちに、ああ、お返事を。」と(右近が)申し上げると、(女君の)御心も慌ただしくて、

 

 

「思はずも  隔てしほどを  嘆きては  もろともにこそ  消えもはてなめ

 

「思いがけずも離れてしまったことを嘆いて、(そこでもし、あなたの命が消えるようなことがあれば、)一緒に私の命もきっと消え果ててしまうだろう。

 

 

遅るべうは」とばかり、書かせ給ひても、

 

遅れるつもりは(ない)。」とだけ、お書きになるけど、

 

 

え引き結び給はで、深く思し惑ひて泣き入り給ふ。

 

(その女君自身が書いたお手紙を)お結びになれないで、深く思い悩みなさってひどくお泣きになる。

※手紙としてまともに構成できていないということ。

 

 

「かやうにこと少なく、節なきものから、

 

「このように言葉も少なく、まとまった長さもないけれども、

 

 

いとどあはれにもいとほしうも御覧ぜむ」と、

 

ますますしみじみと思うも、気の毒にも、(この女君のお手紙を男君は)御覧になるだろう。」と、

 

 

方々思ひやるにも、悲しう見奉りぬ。

 

(男君と女君の)それぞれを思いやるのにおいても、悲しく拝見した。

 

 

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