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センター試験《古文》2015本試験『夢の通ひ路物語』解説・品詞分解(1)

※2015年(平成27年度)センター試験の本試験『国語』第3問の古文にて出題

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

原文・現代語訳の身はこちらセンター試験《古文》2015本試験『夢の通ひ路物語』現代語訳 

 

かたみに恋しう思し添ふことさまざまなれど、夢なら 通ひ べきなら  

 

互(かたみ)に=副詞、互いに、かわるがわる、交互に

 

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形。後の「なら」も同様。

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

ぬ=強意の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

 

べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。基本的に文脈判断。

 

ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

 

ば= 接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

(男君と女君は)お互いに恋しく思い募ることがさまざまであるけれど、(男君は)夢でないときに通える身ではないので、

 

 

現の頼め絶えぬる心憂さのみ思しつづけ、

 

頼め=名詞、頼みに思わせること、あてにさせること

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形。

 

現実で頼みに思わせたことが(叶うことなく)絶えてしまったつらさばかりを思い続け、

 

 

大空をのみうち眺めつつ、もの心細く思しわたり けり

 

つつ=接続助詞、①反復「~しては~」②継続「~し続けて」③並行「~しながら」④(和歌で)詠嘆、の意味があり、ここでは①反復「~しては~」の意味だと思われる。

 

わたり=補助動詞ラ行四段「わたる」の連用形、ずっと~し続ける、一面に~する

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

大空ばかりを眺めて物思いに沈んでは、心細くお思いになり続けていた。

 

 

男の御心には、まして恨めしう、あぢきなき嘆きに添へて、

 

あぢきなき=ク活用の形容詞「味気無し」の連体形、思うようにならない。かいがない。正常でなく乱れている。面白くない、苦々しい

 

男君のお心には、いっそう残念で、(女君への)どうにもならない悲しみに加えて、

 

 

御子の御気配もいとつつましう、鏡の影もをさをさ 覚ゆれ ば、

 

つつましう=シク活用の形容詞「つつまし」の連用形が音便化したもの。気が引ける、遠慮される、気おくれする

 

をさをさ=副詞、しっかり、はっきり。(下に打消の語を伴って)すこしも、めったに

 

覚ゆれ=ヤ行下二の動詞「覚ゆ」の已然形。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「自発」の意味で使われている。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

皇子のご様子もとても気が引け、鏡(に映った自分)の顔も(皇子に)はっきり似ているだと思われるので、

 

 

いよいよ「あきらめ てしがな」と思しわたれど、

 

あきらめ=マ行下二段動詞「明らむ」の連用形、はっきりさせる、明らかにする。晴れ晴れとさせる。

 

てしがな=願望の終助詞、~たいなあ

 

わたれ=補助動詞ラ行四段「わたる」の已然形、ずっと~し続ける、一面に~する

 

ますます「(皇子が自分の子なのかどうかを)はっきりさせたい。」と思い続けなさるが、

 

 

ありしやうに語らひ人さへ 聞こえ  

 

ありし=もとの、昔の、以前の。「あり(ラ変動詞の連用形)/し(過去の助動詞「き」の連体形)」

 

さへ=副助詞、類推(~さえ)。添加(~までも)。ここでは「類推」の意味。よく相談していた相手にさえ相談しなくなったのだから、誰にも相談していないということを類推している。

 

聞こえ=ヤ行下二動詞「聞こゆ」の未然形、「言ふ」の謙譲語。手紙などを差し上げる。申し上げる。差し上げる。動作の対象である右近を敬っている。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

昔のように相談相手(だった右近に)までもお話し申し上げないので、

 

 

人わろく、今さらかかづらひをこなるものに思ひまどは   」と心置かて、

 

人わろく=ク活用の形容詞「人悪し」の連用形、みっともない、体裁が悪い

 

かかづらひ=ハ行四段動詞「かかづらふ」の連用形、関係する、かかわる。からまる、まとわりつく。こだわる。

 

をこなる=ナリ活用の形容動詞「をこなり」の連体形、ばかげている、愚かである。「をこがまし」の「をこ(名詞:馬鹿馬鹿しいこと)」である

 

まどは=ハ行四段動詞「惑ふ」の未然形、思い悩む。あわてる、うろたえる

 

れ=自発の助動詞「る」の未然形、接続は未然形。後の「れ」も同様。「る」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。自発:「~せずにはいられない、自然と~される」

 

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

か=疑問の係助詞

 

「みっともなく、今さら関わり、愚かなものだと困惑されるだろうか。」と気にかけずにはいられなく、

 

 

清さだにだにも御心とけてものたまは いとどしき御物思ひを給ひ ける

 

だに=副助詞、添加(~までも)。類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。

 

のたまは=ハ行四段動詞「宣ふ」の未然形、「言ふ」の尊敬語。おっしゃる。動作の主体である男君を敬っている。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

いとどしき=シク活用の形容詞「いとどし」の連体形、ますます激しい、いよいよ甚だしい

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語。動作の主体である男君を敬っている。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。

 

清さだにさえもお心を打ち解けておっしゃらず、ますますひどい物思いをしなさった。

 

 

こなたにも御心に絶えず思し嘆けど、何 漏らし給は 

 

か=反語・疑問の係助詞、結びは連体形。係り結び

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」なので、「~かは・~やは」とあれば反語の可能性が高い。

 

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ」の未然形、尊敬語。動作の主体である女君を敬っている。

 

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。「む」は、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

こちらの(女君の)方でも絶えず思い嘆きなさるけれど、どうして(その悩みを)漏らしなさるだろうか。(いや、なさらない。)



 

 

御宿直などうちしきり、おのづから御前がちにて、

 

女君が帝の寝所に仕えることがたびたびあり、自然と帝のおそばにいることも多く、

 

 

御こころざしのになきさまになり まさるも、よに心憂く、恐ろしう、

 

になき=ク活用の形容詞「二無し」の連体形、二つとない、またとない、この上ない

 

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

 

まさる=ラ行四段動詞「増さる・勝る」の連体形、増える、多くなる。優れる、勝る

 

よに=副詞、実に、ほんとに、非常に。(下に打消語・否定語を伴って)決して~ない、全く~ない

 

帝のご愛情がこの上ない様子に増していくのも、実につらく、恐ろしく

 

 

人知れず悩ましう思して、いささか御局に下り給へ 

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。動作の主体である女君を敬っている。

 

り=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形。

 

人知れず悩ましく思いなさって、すこし(自分の)お部屋にお戻りになっていた。

 

 

人少なう、しめやかにながめ 給へ 夕暮れに、右近、御側に参りて、

 

ながめ=マ行下二段動詞「眺む」の連用形、物思いに沈む、物思いにふける。ぼんやり見る。遠くを見る。「詠む」だと、(和歌を)詠む、吟ずる

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。動作の主体である女君を敬っている。

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

人も少なく、しんみりと物思いに沈みなさっていた夕暮れ時に、右近が、女君のおそばに参って、

 

 

御かしらなど参るついで、かの御事をほのかに聞こえ 奉る

 

参る=ラ行四段動詞「参る」。「す・仕ふ」の謙譲語。して差し上げる動作の対象である女君を敬っている。

 

聞こえ=ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の連用形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である女君を敬っている。

 

奉る=補助動詞ラ行四段「奉る」の終止形、謙譲語。動作の対象である女君を敬っている。

 

御髪を整えて差し上げるついでに、例の(男君についての)御事をほんのすこし申し上げる。

 

 

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